大晦日です。年が変わらないうちにまとめたかったことがあります。備忘録に近いですが、読んでいただけるとなお嬉しいです。
今年の夏に2週間九州全県を移動してきました。そのなかでも最後の3日間は福岡県南部の八女市に滞在しました。具体的には「うなぎの寝床」という、佇まいとしては古民家を改装したアンテナショップのようなところです。
どうして今夏、八女を訪れることになったのか。まずこの記事では、行こうと決意したきっかけを振り返ろうと思います。
1-地域にお金を落とすことの大切さに気づいた高校生のころ
単に鉄道と旅行が好きだった小学生時代もありました。だんだん学んでいくことが増え、知識が蓄えられていった高校生の頃から、行く先々の情報を集め、地理学との出会いもあると思いますが、都市と地方の構造、行財政の問題について関心を持つようになりました。
高校生の頃は、三陸沿岸のまち、岩手県山田町に行って仮設住宅に住む地元の方と話したり高校で当地の産品を売ったりして地域に直接関わる経験をしました。
山田町には4,5回ほど訪れる機会がありましたが、ここで学んだのは「地域にお金を落とすことがいかに大事か」ということでした。震災・津波の影響を強く受けた地域です。私が初めてここを訪れた時には震災から3年が経っていたこともありますが、たしか仮設住宅で言われたことです、「ある程度時間が経った今私たちは、金銭的自立をしなければいけない」と。その時いや今も必要なのは、被災者が継続的にお金を稼げる・仕事に安定して就ける環境を整えてあげる(その手伝いをする)ことだと思います。高校生の役割であるかそうでないかは別として。
この経験以降、被災地に限らず、どこに行っても地域にお金を落とすことが、一番直接の支援になるし経済を回すことそのものであると意識しながら過ごすようになりました。
2-「d design travel」との出会い
お金を落とす、もっと身近な言葉で置き換えれば「何かを買う」とも言えそうですね。地域の人がつくったモノを買うことがそれに直結すると考え色々と調べていたら、d design travelという、各都道府県別に地域の情報をまとめたガイドブック?雑誌?を見つけました。一般的な観光ガイドと異なり、大資本だけでなく地域に根付いた企業や商品を、「美しいデザイン」という視点から選りすぐり紹介しています。この組織では、本の出版が決まると編集部が数週間その地域に移り住み取材を進めます。その間、地域の人に地元の良いところやオススメの場所などを聞いたり交流する機会もあり最終的に本の形でまとめられ出版されています。
そしてその成果は本だけでなく、東京渋谷のヒカリエにあるd47 Museumやd47 design travel storeで並べられ、実際にモノに触れながら、その地域を知ることができるようになっています。
この仕組みがとても面白いと思いました。商品の説明が上手く、ワークショップも楽しそうだったからです。これまで観光客には気付かれづらかった場所やモノが丁寧に紹介されているから、深く地域を知ることができます。
この事業を少し俯瞰して捉えてみると、d design travelは地域の情報を主に都市の人に向けて紹介するツールのように見えます。拠点を東京においているのも影響していると思いますが、消費する人は主に都市の人です。
その一方で、拠点を地域に置きながらその地域をPRしている人たちはいないかと思い調べたところ、八女の「うなぎの寝床」にたどり着きました。
3-「研究と商売」の連続性が見出されている…
インターネットで代表の書いた記事(note)を見つけ、行くことを決めました。具体的にどこが重要だと感じたのかを少し。
大抵、文化や地域という言葉は曖昧に使われがちです。だから地域おこしと一口に言っても指し示すものが違って齟齬が生まれたりかなり表面的な事業で終わってしまうことが多いです。これまでの自分の経験でも、色々と地域に出て関わって中でそういう案件は多かった。この記事の中ではまずこれらの言葉の定義が明確に示された上で話題が展開されていきます。
まずは「文化」について、これは上記に記している通り「土地と人、人と人が関わり合い生まれる現象の総体」と定義しました。これが、どういうことかといいますと、人間が行う全ての行為と、それにまつわる現象。ということだと思います。かなり広い言葉です。そして、この文化という言葉は前に名詞を引っ付けることによって、領域がグッと絞られてわかりやすくなります。例えば「芸術文化」「スポーツ文化」など。「地域文化」といった場合は、ある一定地域における、土地と人、人と人が関わりあい生まれる現象の総体となります。
上記noteの記事内02.「地域文化」とは何か? から引用
そして、うなぎの寝床が担当するべき役割を以下の図で整理していました。アンテナショップだと思って最初知ったので、このような枠組みで学際分野を理解しているアンテナショップがあるのか、と初めて見た時かなり驚きました。
そしてうなぎの寝床の役割は「地域文化商社」であると終始言っています。(上の図でいうと一番下に書かれているものです。)
この図の中に地理学も出てきますが、地理学の役割というのは、まだ学部2年の学生が言えることではないかもしれませんが、「現在までの特定地域をとにかく丁寧に分析して地図や図表を用いて的確に表す」ことに目的が置かれています。求められるのは分析であり、地域問題解決の新たな策を提示するわけではありません。(先生方の話や学会を見ていて感じたことです。)解決策の提示は他分野に任せられています。
私は、少なくとも学部の4年間で身につけた(い)地域分析・研究のノウハウを基盤にしてまずは丁寧に地域を知り、その上で地域に直接貢献する仕事がしたいと考えているので、うなぎの寝床のこの図のような役割の捉え方は参考になりました。研究分野と、それを元にして地域の産品(商品)をプロデュースしていく(商売していく)という構造は、理にかなっていると思いました。
このような経緯で、8月下旬に訪れることになったのでした。ちょうど池島に行くタイミングと重なったので、うなぎの寝床訪問の前々日に池島へ行く予定を組みました。池島に継続して訪問していることで気づいた、産業がなければ地域は存続し得ないという学びを、地域文化を紹介し販売しているうなぎの寝床に行くことで深めようと思ったんです。
行くことの目的と注目するところを、事前に以下の点にまとめました。
・そもそも八女とはどんな街なのか
・非営利でなく会社であることの意味はなにか
・なぜ八女なのか
・無形文化財(久留米絣)の価値をどうやって伝えているのか
・地域に根付くということの価値をどう捉えているのか
などです。
実際に訪問して何を考えたのか、それについてはまた別の記事にしてお話しします。
長々と、ありがとうございました。
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